北京とロンドン五輪で銀メダルを獲得、現フェンシング協会会長の太田雄貴さんが、再来年度から日本代表の選考に「英語力」を求める事を会見で発表しました。
しかしフェンシング協会と提携するのは「ベネッセコーポレーション」という特定の企業であり、尚且つ太田雄貴氏も広告などに登場していることから、その改革に称賛の声がある一方、「私物化」「金のため」といった否定的な意見も多く上がっています。
「英語の成績が基準に達しなければ代表に選ばない」。
日本フェンシング協会の太田雄貴会長が、再来年から代表選手の選考にあたって英語の試験を導入し、一定の基準に達しない場合は、実力が上位であっても代表に選ばないことを発表しました。https://t.co/vO2VSKTve7#nhk_news #nhk_video pic.twitter.com/yX5IBzNYT5— NHKニュース (@nhk_news) 2019年4月25日
個人的にはこれはあり得ないと思っています。東京オリンピックも近いので改革のタイミングというのは分かりますが、特定企業との提携、更に代表の選考にも影響力を及ぼすというのは、どうしても協会の私物化を懸念してしまいます。
とはいえ太田雄貴さんにも言い分はあるでしょうし、理解できる点もあるのでまとめて紹介します。
太田雄貴の発言
日本フェンシング協会と太田雄貴氏の発言は以下。
英語を代表選考基準にすると共に、オンラインで学習できる機会も選手に提供します。
遠征先でも、ちょっとした隙間時間でも、学習したい!という意欲をサポート。
現役中もセカンドキャリアでも、グローバルに活躍できる選手を育てます。#フェンシング #突け心を #GTEC #AthleteFutureFirst https://t.co/2lqE2ywcRN
— 日本フェンシング協会【公式】 (@FJE_fencing) 2019年4月25日
実施にあたり、選手達には昨年から中身を伝えてあり、実施までも後2年あります。コツコツやれば、必ず超えられるスコアになっています。
日本フェンシング協会は、選手達の事を第一に考え選手達を商品として考える事なく、フェンシングを通して成長していってほしいと思っています。
— 太田雄貴 (@yuking1125) 2019年4月25日
今回、英語の部分を特に取り上げて頂いていますが、大切なことは、
ATHLETE FIRST
から
ATHLETE FUTURE FIRST
の一環として、英語を学ぶ機会を協会側が準備しているということです。
しっかりと”学ぶ”機会を作っていきます。
学習障害などにも特例を認め真摯に対応していきます。— 太田雄貴 (@yuking1125) 2019年4月26日
フェンシングは事実上審判用語以外は英語が公用語です。
日本代表になると、年間10試合海外で戦います。
遠征先でずっと練習している訳ではないので、空いた時間にオンラインで英会話が出来る。それを協会が用意します。— 太田雄貴 (@yuking1125) 2019年4月26日
協会雇用の外国人コーチとのコミュニケーションにも語学は必須で、
言葉が壁となりコミュニケーションがうまくいっていない課題もありました。
通訳を雇えという意見もありますが、そういった課題を選手の成長機会として捉えたいと考えています。— 太田雄貴 (@yuking1125) 2019年4月26日
更に会見では、
「世界ランキングがどんなに高くても代表に選ばないということは、競技団体として相当の覚悟を持って決めた。今だけでなく、選手の未来を考えた結果で、協会として真っ向から取り組んでいきたい」
というような事をおっしゃっていたようです。
太田雄貴とベネッセ
日本のフェンシング選手達に英語を教えるのは、協会と提携したベネッセコーポレーションです。そして太田雄貴さんはベネッセコーポレーションと仕事上の付きあいがないわけじゃありません。
「たまごクラブ」という育児情報誌の表紙にも登場した太田雄貴。「たまごクラブ」はベネッセコーポレーションが展開しています。ちなみにこれは昔の話ではなく2019年の5月号という発行ほやほやのものです。
百歩譲って選手に英語力を求めるのはいいとして、会長が仕事をもらってる企業と協会を提携させるというのは、ちょっと別の問題になってしまってます。
ただ好意的に解釈するのであれば、マイナー競技のフェンシングにベネッセコーポレーションという太いスポンサーがつくことで、「長期的な日本代表の強さ」にとっては良い影響があると考えたのかもしれません。
そうはいっても日本代表の選考というのは「個人の強さ」に則るべきですし、これはちょっとあり得ないレベルの方針かなと思いました。
選考基準は曖昧になるのか
年に1回の試験を受けてもらい、一定の基準に達しなかった場合は、フェンシング競技で実力があっても代表に選ばないようです。一定の基準といっているので、それをクリアしていれば、あとはフェンシングの優劣で選ぶといった類の選考基準になりそうです。
協会や太田雄貴氏の言い分としては、競技生活を終えた後のセカンドキャリアのためにも英語を学んだ方がプラスになるということです。
現役選手の意見
宮脇花綸さんが良い点と悪い点について見解を述べていました。
英語テストについて一選手としての意見
○判定は仏語だがそれ以外の会話は英語なので妥当※柔道のように
○英語への苦手意識軽減へ
○コーチも受けるので、かつてのコーチ側の不手際逸話を聞いてきた身としては安心
○運動強度が高く、遅くまで練習する競技でもないので、練習時間が削られる懸念はない— 宮脇花綸 (@KarinMiyawaki) 2019年4月26日
×全年齢適用?学生だと時間的制約等話はかわる
×無償サポートは協会登録者or全日本出場者全員とか不平等なく広い範囲?
×基準は必要最低限で
×セカンドキャリアは国際人である必要や、それが英語である必要がなく、理由として弱い
×LDの排除
×その為の税金ではないという意見にはぐぅのねも出ず— 宮脇花綸 (@KarinMiyawaki) 2019年4月26日
賛成派
賛否両論だったのでまずは賛成派の意見から。中には太田雄貴さんがリツイートしているものもありました。
太田さん攻めてるけど、It makes all sense. セカンドキャリアだけでなくて、英語ができないことによる国際大会でのアウェイ感、不安感が下がるという競技成績に直結する理由もある。太田会長頑張れ
— HIRO MIZUNO (@hiromichimizuno) 2019年4月26日
ほんとこれ大事。少なくともインタビューで最低限の受け答えができるレベルは日本代表選手は持ち合わせていたほうがいいと思う。
— 西山俊@プロライフセーバー - Shun Nishiyama (@ShunNishiyama) 2019年4月26日
考え方や仕組みを更新していくのは良いことだけど、
自動翻訳がスタンダードになるかもしれない10年、20年後に、語学力がセカンドキャリアへの武器になるのかどうかは、その時代が来るまでわからないなと思う。— ヒマラヤワ (@ViMC8hjwK8TngCp) 2019年4月26日
素晴らしい画期的なアイデア。日本スポーツでフェンシングのポジショニングを明確にする為の最重要施策として位置付けるべし。サッカー、野球、バスケット、バレー等々メジャーなスポーツには競技人口では逆立ちしても敵わない。(続く
— テツ (@yakD6L5Amigld0D) 2019年4月27日
引退後の選択肢が増えることは貧困から犯罪に手を染めてしまうことの防止にも繋がりますよね。
何も始まってないうちから批判する人は今後も後を絶たないでしょうけど、若さを武器により良い方向へ進んで欲しいと願っております。— デセト (@Decrypt10) 2019年4月26日
新しい取り組み応援しています!
ずーっと野球やってた友だちが、ケガを理由に野球辞めてしまったあと、結局何も残ってない…とつぶやいていたのが忘れられない。
大変かもしれないけど、次の人生にも続くと思います。— きときとNo.1 (@kitokito_go) 2019年4月25日
賛否両論あるみたいですが、それだけ太田会長の取り組みが世の中に届いている事だと思いますし、風通しが良くなりつつある証拠だと思いますね。
— daispoworldrugby (@Daispo_Rugby) 2019年4月26日
実績のあった選手が将来国際フェンシング連盟でロビー活動とか要職に着く事も有るかも。
発言力が増せば、日本のエンターテイメント要素を取り入れたような大会が 世界で標準化するかも。— あ (@OK9KZSOZ7V8X1c1) 2019年4月26日
否定派
こうして貴殿は選民思考にて
その競技特性に秀でた優秀な選手を
言語が出来ない 理由 で排除するのですね世界最強のスイマーだったマイケル・フェルプスの学習障害の詳細です
英語ですので、貴殿の得意分野でしょうからご存知かとご一読くださいhttps://t.co/Tkqa8wavCv
— 武井きょうすけ (@takeikyosuke) 2019年4月25日
フェンシング協会の英語の件、賞賛の声が多いからあえて苦言を呈すけど、正直これ「話題づくり」先行だ。なぜこれをわざわざ記者会見して発表するか。社会の空気を掴み、共感性を狙う!と言いつつ、ベネッセ社とフェンシング協会のPRが先行してる。英語力が競技力に繋がるのは分かるが..手段の目的化。
— 佐藤奨 / TSUTOMU SATO! (@2tomman) 2019年4月25日
こういう、人間の多様性に思いが至らない人物は、組織のトップに立ってはいけない世の中にとっくになってると思ってたら、この方は胸張って発表してて草生えましたw
早く撤回した方がいいね、これは。— 湯尻淳也 Junya Yujiri (@yujiri) 2019年4月25日
言葉の壁を簡単に越えることが出来るのがスポーツの魅力の1つなのに。
— げん (@genshise) 2019年4月25日
英語は確かに未来を助けるスキルの一つになり得るが、このやり方では英語が不得手なアスリートの未来を潰すことになる。
— サッカー好き (@shumi_soccer) 2019年4月25日
独自にやるならともかくベネッセの商売じゃないですか。ちょっとこれはどうなのかと。フィリピン語学留学を勧めるとかならともかく。
— かるけん (@gorira_bomb) 2019年4月26日
選手ではなく、コーチなどの選手をサポートし同行するスタッフの条件にすれば良い。多彩な選手は良いが、不器用なり、生まれつき困難な人は、トップを目指すなと言う警告なんでしょうか?
— ツカ格闘 (@kakutsuka) 2019年4月25日
実力があるのに代表から落ちた選手は、語学力が足りなかったと言う評価になりそうですね…。英語検定の結果も一般公開される予定ですか?
— 流浪のもの (@wandering_thing) 2019年4月26日
アスリートという社会人にとって語学力は大事、というのと競技大会の選考になぜ「英語学力必須!」にしたのか、の間の論理が抜けています。
選手のキャリア形成、進路にとって確かに語学は有効ですが、ではなぜフェンシング競技の選考に「必須」とするのか、ベネッセさんとお話でもされましたか?— もんちち (@1Z45MV5mwKgcgX7) 2019年4月26日
引退後にセーフティーネットにできるほどの英語力を養うのは、普通のサラリーマンでも長期に相応の時間を必要とするのに、それを必須か。
— FaqQueue (@FaqQueue) 2019年4月26日
教育のサポートは支持するが、強制は有り得ない。
強制となればそれは労働だからね。あくまで自主的の範囲に収まらなければ、どの職においても理由を付けてタダ働きの乱用が成立してしまう。
英語が必須だとして英語の習得に動かない選手がいたならば所詮その程度の選手でしか無いのです。
— 🐧こうていぺんぎん (@pengin_007) 2019年4月26日
なるほどの。コーチは協会が大金を払って雇ってるのだから偉いのだ、と。そんなお偉いさんには、おまえらが努力してコミュニケーションをとれと、そういうことじゃな? で?「アスリート・ファースト」の理念は、どこへ消えたのかね?
— 蘇化子 (@SO_KASHI) 2019年4月26日
フェンシングを日本に広めようと頑張っておられる太田さんがなぜこんな変な決定をするのか腑に落ちないです
英語が特に苦手な子はこれでフェンシングの道を諦めるかも。英語力不足が国際試合で不利になる事例がないなら意味のない決定。
ベネッセの宣伝に利用されてるのかとまで思えます。
— よし (@117nunu) 2019年4月26日
セカンドキャリアとかアスリートの未来とかいうけど、ファーストキャリア潰してどうすんの?
— だいすけ (@only1buta) 2019年4月26日
まとめ
人権問題も孕んでいますし、スポーツ仲裁裁判所に選手が訴えるレベルの事案かなと思います。ただ良く考えたらスポーツ仲裁裁判所に異議申し立てするのも英語力が必要かもしれません。
真面目な話しをすると、太田雄貴さんは日本では突出して実績のあるフェンシング選手でしたし、彼が「英語力は国際試合において重要」ということを肌で感じた上での今回の決定だと信じたいです。
個人的には猛烈に反対ですね。フェンシングはフェンシングの実力だけで選考してほしいですし、セカンドキャリアに役立つほどの英語力は要求が高すぎる気がします。以上フェンシング協会会長太田雄貴氏の日本代表選考についてでした。