幻冬舎社長の見城徹氏が自身のツイッターにて、津原泰水氏著作の実売部数を公表するという行為に及び、一部の作家達から猛烈に批判されています。中には幻冬舎に印税を引き下げられた、法外に安い印税で執筆させられた等、幻冬舎についての暴露を行う作家も現れ、ツイッター上が荒れています。
編集担当者がどれだけの情熱で会社を説得し、出版に漕ぎ着けているかということをわかっていただきたく実売部数をツイートしましたが、本来書くべきことではなかったと反省しています。
そのツイートは削除いたしました。申し訳ありませんでした。— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月17日
一応見城徹氏は謝罪し暴露ツイートを削除していますが、一方的に暴露されてしまった作家側は収まりがつかなかったようです。(発行部数と違い実売部数は非公表というのが業界の慣例でした。)
そもそもの発端としては、津原泰水とトラブルになっていた百田尚樹を援護射撃する意味での、見城社長の津原泰水ディスだと思いますが、現在は問題は別のフェーズへと突入、一部作家達が印税率の暴露などを行い、幻冬舎に応戦しています。
幻冬舎の印税率は低い?
作家に入る小説の印税は10%というのが業界の常識のようです。それを踏まえてご覧いただければと思います。
幻冬舎の本って数字バラしてもいいの? じゃ。
_人人人人人人人人人人人人人_
> この本、印税2%でした <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ https://t.co/vSQXBebnhW— 渡辺浩弐 (@kozysan) 2019年5月16日
印税2%で幻冬舎から小説「ブラックアウト」を出版したという渡辺浩弐さん。
幻冬舎、書き手を雑に扱う出版社なんだなという印象。
私のデビュー作の時も、書く前に「印税は10%です」と明言されていたのに、校了直前「ごめーん企画会議8%で通しちゃってたから8%じゃないと本が出ないんだ。8%でいい?」と突然言われ、新人で何も分からず出版取り消しになる恐怖で(続— 小野美由紀 (@Miyki_Ono) 2019年5月15日
小野美由紀さんははデビュー作で足元を見られ、印税10%から8%に下げられたそうです。
_人人人人人人人人人_
> なお太田出版 <
> 初版印税無し! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄— 氏賀Y太(ゴア垢) (@uzigawaita) 2019年5月17日
初版の印税がなかったという氏賀Y太氏。(こちらは幻冬舎ではありません。)
作家によるんでしょうが、幻冬舎は一部作家が扱いに不満を抱いている様子でした。それが今回の見城徹の実売部数暴露で世論から批判されていたので、反撃するいい機会となったのかもしれません。
印税2%は酷いが理由はある
まず上記作家の印税暴露ですが、 小野美由紀さんのケースは事実であれば10:0で幻冬舎が悪いと思います。 新人だった小野美由紀さんがそこで対抗するのは現実的に難しく、後々になって契約を有利にするのは卑怯です。
渡辺浩弐さんのケースですが、この方の出版した「BLACK OUT」は元々はテレビドラマだった作品を小説化した作品なので、そこを説明しないのはさすがにおかしいです。テレビドラマ版でも原案として渡辺浩弐さんが関わっていますので、印税の安さはずっと根に持っていたのかもしれませんが、了承して出版したのであれば、幻冬舎だけに落ち度があるとは思えないです。
以下漫画家の高山瑞穂さんも言っているように、既存コンテンツの流用であれば印税は下げられます
オリジナル作品の単行本で印税10%は日本の出版業界では常識的なもの。逆にそれを切るものは何か事情があると思った方がいい。
例えば僕のガンダム漫画の印税は5% 。
その理由は、ガンダムというコンテンツの著作権を持っているサンライズと僕とで権利が折半されているから。
5%+5%=10%— 高山瑞穂 (@mizpi) 2019年5月17日
その割合が7:3だったりすることはあるし、権利者が沢山いる場合があって、そうなると5:3:2とか直接の作者の取り分がたった2%になってしまう場合もあるかも知れない(ってそう考えても2%は酷い数字だけど)
— 高山瑞穂 (@mizpi) 2019年5月17日
幻冬舎に振り回された作家に同情はしますが、実売部数と違い印税は契約の暴露になるので、その点は果たして問題ないのか引っかかる所もありました。ただそれでも2%はあまりに安い印税契約といえるでしょう。発行部数1000部としても2万円、1万部で20万円しか作家に入らない計算になります。作家あっての出版社なので幻冬舎は改善する必要がありそうです。
志茂田景樹も嘆き
僕が作家になった頃、出版契約書はあったはずだが、なきも同然だった。これ、おついでのときに、と渡されたことはあったが、ほったらかしで何年も経って屑箱へ。「書き下ろしなので印税は12%で」「いいよ」口約束だけどダイヤモンドより固かったな。作家と編集者は信義と心意気で通じあう時代だった。
— 志茂田景樹 (@kagekineko) 2019年5月16日
「黄色い牙」で直木賞を受賞した志茂田景樹も、幻冬舎の編集者のやり口に苦言を呈していました。当時は契約書より口約束が重んじられていたようです。
印税2%に同情するネットの意見
印税の安さや、足元をみた幻冬舎のやり方に怒りの声が多くありました。
2%⁉️ 少なっ!
— かっちゃん☆ (@8390hawk) 2019年5月17日
作家本人も知らない本の実売数を無断で公開した社長に対して、作家陣が印税の数字を明かして対抗している流れ凄いな。まさにインターネットという感じだ。
— ヤギの人(ゐうさい) (@yusai00) 2019年5月17日
いやあのさあ。俺、著者印税って一律10%なんだと思ってた!
— 汀こるもの@五位鷺の姫君 (@korumono) 2019年5月17日
幻冬舎、ヒットメーカーだし、あそこから本出したらいっぱい刷っていっぱい売ってもらえるんだろうなと漠然と思ってたけど、どうやらそうでもない上に実売部数でディスられる、印税率も安い(さすがに2%は例外だと思いたいが)となると作家にとっての魅力はなんもなくなる。まともな編集者が気の毒だ
— 魚蹴/宮澤伊織 (@walkeri) 2019年5月17日
幻冬社の一件、本の実売数を晒して非難するという手法が信義にもとると問題になってますが、「原稿料0円、印税2%」という話が本当なら、さもありなんである
出版社がその本の中身にほとんど価値がないと判断してるってことなので、作者をリスペクトするわけがない— シュターデン提督 (@AdmiralStaden) 2019年5月17日
AmazonのKDPで自費出版したほうが良くないですか…?
もちろん編集や宣伝など、出版社がやってくれる部分もあるのだと思いますが、印税35%~70%ですよ…。
自分で表紙のイラストとか絵描きさんに頼んでも儲かるのでは。— クロシェ (@cloche019) 2019年5月17日
印税は刷り部数×定価×10%が基本。売れても売れなくても変わりません。最では実売印税の書籍や印税8%の契約もあります。新人とかね。さすがに実売はどうかと思いますが。損益分岐点越えなかった場合は赤字な訳です。そんだけ、版元はリスク背負ってることはお忘れなく。それでも今回の幻冬舎はひどい。
— ペペロンチーヌ@5/25アンジュ千葉 (@peperon227) 2019年5月17日
編集者は、書き手からダメダメな原稿を受け取ったときに、事前に約束した原稿料や印税を下げたくなる時があるかもしれない。
でもそれは、倫理的にNGなだけでなくて、ビジネス的にも圧倒的に損だからやめておこうぜ…というのが、色々な経験をしたうえでの個人的な意見です。(続く)— 横田大樹🌤️書籍編集者 (@editoryokota) 2019年5月16日
作家を企業化(プロダクション所属)すれば、独禁法関係が適用出るるのかなあ。
一般的な経済感覚では、中小企業搾取の一種の下請法違反の契約だなあ。
— Mtodo (@Mtodo) 2019年5月16日
もっと作家を大事にしないと書き手がいなくなりますね。
— ハットリ社長@起業6期目 (@ERMINECORP) 2019年5月17日
やっす!
— 塩崎ツトム (@kaspar_63) 2019年5月17日
これは衝撃的すぎる、、、
ゲーム・キッズもBLACK OUTも名作なのに。今回を期に令和元年のゲーム・キッズとニコニコでのノベライブ、楽しませて貰ってます。
— kirito (@kirito37652121) 2019年5月17日
作家にとってのブラック企業。
— HAPPYMAKER (@3838_blueseal) 2019年5月15日
さぞお腹立ちもあり、新人さんである弱みに付け込んだ悪質な手口ですね。
わたしも他の会社ですが「原稿料はお支払いします。著作権ごとこちらにいただければ原稿料〇%増やせます」とか、重版見込めるムック本で誰がそんなこと飲むかと思ったりしましたし......。
飲まないと続かない時は泣きました。— いち@fellows (@ichi_singo) 2019年5月15日
私はあの騒がしくも下品な社長が嫌いなので頼まれても書きません。頼まれないでしょうけど。
— 中山マコト@『一瞬で心に火を点ける88のマジックフレーズ』 (@makin3939) 2019年5月16日
トレンドで「印税2%」が話題になってるけど作曲家のCD印税も1.5〜2%なので数字自体にショックは受けなかった…もちろん音楽と本では著作者の貢献度が違うし音楽は二次使用料が発生するので比べられませんが(だから本は基本10%程度なんでしょうね)
— 神前 暁 / こうさき さとる (本名) (@MONACA_kosaki) 2019年5月17日
ちなみに「原稿料」にあたるものは作曲家にはないのです。編曲料は出るので作編曲を一人で担当していれば貰えますが、作曲だけのクレジットだと売れた分だけ印税だけが収入です。
— 神前 暁 / こうさき さとる (本名) (@MONACA_kosaki) 2019年5月17日
印税率の話題が散見されるけれどえろげとか基本版権買い切りだゾ
— 田中 一郎 (@tanaka_ichiro) 2019年5月17日
幻冬舎を擁護をする意見も
数は多くありませんでしたが、作家にも問題はあるという意見も。
それでもOKをして発刊したまでの理由や経緯がわからないと同情ができません…。
— AOIHANA (@_sato_oekaki) 2019年5月17日
えっ!?
売上実売数と
契約内容に関わる数字は意味も重さも違うと思いますけど?この人、馬鹿なのかな(笑)
昔から馬鹿だと思ってたけどさ(笑)— 紫炎@茶々丸 (@marina_nsgt) 2019年5月17日
ま、それもこれも面白くもない本を世に出した作家と出版社、両方の罪ですかね。
学術書じゃないんだから、売れない原稿を書く作家の実力の問題じゃないですか?— 十三代目 笑助 (@monkeyturn6) 2019年5月17日
印税2%ひどいって言ってるけど、こういうのってビジネスであって契約してるんだよね?
納得して依頼を受けておきながら、後から安かったんです〜って、それこそ恥ずかしい様な…。— Attsta (@Attsta) 2019年5月17日
小説家は全然儲からない
尊敬に値する職業ですが、今の時代全く儲からないようです。漫画が売れなくなったと聞いていましたが、小説は漫画の比じゃないレベルで売れていない厳しい時代です。
(参照:http://toriaezutori.com/tag/%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%99%BA%E8%A1%8C%E9%83%A8%E6%95%B0)
小説は東野圭吾さんなどごく一部の作家は大金持ちでしょうが、なかなか夢の無いジャンルとなっています。純文学はもっと悲惨ですし、お金以外の高尚な志がないとやっていけないお仕事になってしまったのかもしれません。
仕事があっても有名でない作家は食べていくことすら難しいでしょうし、人材が集まらなくなってしまうような気がします。まさかyoutuberなどネット配信者より小説家のほうが儲からない時代がくるとは想像もしていませんでした。
作家と同様幻冬舎など出版社も苦しい時代なんでしょう。業界内で揉めていないで一丸となって出版業界を盛り上げて欲しいところです。