保釈中に日本を出国し逃亡していたカルロスゴーン容疑者がレバノンで暴露会見を行いました。会見の9割ほどは逮捕後に推定無罪の身であるにも関わらず如何に酷い待遇であったかという日本の司法制度に対する不満でしたが、いくつか興味深い発言もありました。
カルロス・ゴーン氏の記者会見
・協力してくれた仲間あんがと
・逮捕・拘留中はすんげぇツラかったわ
・ワシは何も悪くないで資料あるで
・17年間すんげぇ頑張ったで
・めっちゃ日産、ルノーの価値落ちとるやんけ
・日産・ルノー・三菱連合やりたかったんや
・日本大好きや
・ワシは貪欲/独裁者やない pic.twitter.com/UEsDENWJAj— 西脇資哲 エバンジェリスト (@waki) 2020年1月8日
日本を出国した方法については今回一切触れていません。日本国内ではプライベートジェット利用者の出入国時に荷物検査が杜撰だった実態があったようなのでそこは今後恐らく改善されるでしょう。
ゴーン絡みの事件は論点が2つ、『日本の時代錯誤な司法制度』『ゴーンのやった犯罪行為疑惑』についてですが、ほとんどは前者の日本の司法制度への糾弾に終始していました。さすがに世界の方々もこの論点のすり替えには気付くと思いたいですが、人権問題への批判は世界のトレンドなので日本への批判にどう影響するのか懸念もあります。
ゴーン会見 質疑応答とマネーロンダリング疑惑について
複数のペーパーカンパニー会社を通じて日産の資金をもらい受けるなどしていた疑惑については、ベルサイユ宮殿で誕生パーティーした事例を元に、テネシー州では無罪であるなどとして自身の潔白を主張されていました。
法律を犯している認識ではなかったとも言っていますが、自身が無罪であることの主張については根拠が乏しかったです。質疑応答でもそこは突かれていました。
恐らく彼は役員会議などで定められた10億円の役員報酬では不満だったんでしょう。多くの利益を日産と日本の齎してきたのに、なぜ自分が悪党扱いされ理不尽な仕打ちを受けるのかそこがゴーンは最も納得していない様子でした。
関与した人物暴露も政治家についてはレバノンに配慮
自身を日産から追い出しことに関与した人物についても暴露していました。
西川広人前社長、ハリ・ナダ専務執行役員、豊田正和社外取締役、川口均前副社長、今津英敏元監査役の名前を挙げています。政治家も関わっているとも言っていましたが、レバノンと日本の摩擦を回避する義務があるとして、政治家については名前を言わないとも発言されていました。
尚質疑応答で安倍首相の関与についてははっきりと否定しています。
逃亡した理由について
・妻に会いたかった。多くの人は妻に会いたくないかもしれないが私は会いたかったとのこと。ここはナイスジョークでしたが愛妻家であることと、あとは共犯も疑われているので、口裏合わせなどの目的もあったかもしれません。
・日本の裁判がとても遅いことにも堪忍袋の緒が切れてしまったようです。彼を弁護していた高野弁護士も次第にカルロスゴーンが自身らの話に耳を傾けなくなったと発言しています。
日産の株は自分が去ってから下がっている
とにかく自分が日産にどれだけ貢献したかということを主張していました。また自身が失脚してから日産の株が下がり続け、日産が実質的に失った資産についても指摘しています。
これについては彼が逮捕されなければ株価は維持できたかもしれませんし、おかしな言い分でもありました。カルロスゴーンの中では数十億貰ったところで、比べ物にならない利益をもたらしたのだからいいではないかという考えなのでしょう。
ゴーン記者会見 前半は勾留期間と待遇への不満
とにかく勾留中の待遇がご不満だったようです。以下翻訳のテキスト化です。長いので面倒な方は読み飛ばしてください。
日本の裁判は起訴されれば90%以上が有罪。馬鹿げている。
私は連れ去られてしまった。家族から、友人から、コミュニティからも引き離された。私は逮捕された2018年11月から自由を感じていない。表現しずらいこと。いかに酷かったか。私は改めて感謝したいですが、家族と会いする人たちと一緒になれたことをうれしく思います。
無期限に独房に入れられた。何度か保釈を却下された。新年を一人で過ごした。孤独でした。6週間家族に会っていなかった。1日8時間も弁護士がいない中で尋問をうけていた。なんの罪かも分からない中。
証拠のテープもある。自白すれば終わりだというようなことを言われた。自白しなければ終わりというようなことを言われた。家族もです。
無罪として戦うか、それともそうしないかということです。そうした状況というのは今も日々変わっていません。希望を失っていた。130日間勾留されていた。私はずっと無実を訴えていた。皆さんに私は今日お話ししようとしたこと、独房の拘置所に戻された。
日本の司法制度は国際的国連の基準を満たしていない。今日は重要な機会。
私は何故逃亡したのかをお話ししたい。ようやく自由に話すことができる。勾留されている間は私を酷い見方をするのは簡単。しかし私は事実を証拠に基づいてお話する。私を責めている人たちは茶番。真実をお伝えする。日本の裁判は裁判官でなく検察が全て決めている。
私は基本的な人権を侵害する制度について話す。私は逮捕されるべきではなかった。悪意に満ちたものたちが私の評判を破壊し、人格を傷つけた。家族が変わらぬ愛をみせてくれたことに感謝します。妻、娘、母に感謝します。
皆想像できない痛みを感じていた。私はずっと一人で勾留されていた。
日産の幹部が計画した。日本のメディアも結託していた。レバノン当局、市民は私への信頼を失わないでいてくれた。小さな国であってもレバノンは正義の心を持っていることを示した。世界中の弁護士のことを考える。自分達のキャリアを危険にさらし、腐敗したシステムと戦う。推定有罪とし自白を強要しようとした。刑事司法制度の改革を求める人たち、日本にいる人たちは時代遅れの司法を改革しようとしてきた。。
基本的な人権、正義にひは無関心なものです。家族から引き離されたのです。11月のあの日。延々と続く日本の司法制度への批判。私は選択肢を与えられなかった。日本は時代遅れ。この中で私は有罪を認めるしか方法論がないと圧力をかけられた。正義が重要ではなかった。私にとっては重要なことなのに。
ネットの反応まとめ
ゴーン被告のスピーチは良くも悪くもフランス人の主張パターンそのまま。自分のことは話さず相手の非礼を徹底的に糾弾する。
アメリカ人は自分の正しさを主張する。韓国人は自分の恨みや感情を共感させる。日本人はまず事実関係を説明する。スポーツや政治見てても多くはこんな感じ。— 永山久徳 (@h_nagayama) 2020年1月8日
【悲報】ゴーン氏LIVE中継WBSに論破される
・99%の有罪率を主張しても何の意味もない。
・無罪だと私だけが嵌められたでは全く意味が違う。
・有罪に対する反論はなかった。
・保釈された上に逃亡を図っており弁明の余地はない。
・人権がないというが、保釈されたうえに強力な弁護団がついている。— tokyo2020tokyo (@tokyo2020tokyo) 2020年1月8日
カルロス・ゴーンの会見、質疑応答に入ったが、それまで英語で話していたゴーンにフランス語やアラビア語、その他で次々質問が飛び、6ヶ国語話せるというゴーンがいちいち言語を切り替えて答えるので、テレ東の同時通訳3人が完全に沈黙してしまった。
— 竹熊健太郎《地球人》 (@kentaro666) 2020年1月8日
司会「ゴーン氏は英語の質問には英語で、フランス語にはフランス語で、アラビア語にはアラビア語で答える」
最初の質問がレバノン人なので、いきなり同時通訳が止まる。NHKに切り替えたがこっちも通訳なし。フランス語の質問は通訳あり。カオスだw— 伊丹和弘@マリサポ兼記者 (@itami_k) 2020年1月8日
ゴーン会見の抜粋見たけど、司法に関しては目新しいことなかった。日弁連と国連人権委が昔から何度も勧告してるのと同じことばかり。しかしこれでメディア通じて世界中に日本の前近代的司法が知られることになった。検察の負け確定。
— 國本依伸 (@yorinobu2) 2020年1月8日
WSJの質問「これから一生、逃亡犯として暮らすのか?」 ゴーン氏の答え「私はずっとミスター不可能と呼ばれてきました。みんなが不可能だと思うことを可能にしてきたのです。私は必ずこの嫌疑を晴らします」
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2020年1月8日
CNNの質問「日本の小さな独房から、レバノンという広い独房に移っただけでは? 他の国に行く自由はないですよね?」
回答「今はたしかにそうだが、レバノンでは私は家族と一緒にすごせ、電話もインターネットも自由に使えます。ここでは私はまったく囚人ではありません」— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2020年1月8日
テレビ東京の質問 「あなたは日本で尊敬されているCEOでした。でも今、あなたは日本の法律をやぶってここにいる。それについてどう思うか?」
回答「確かに保釈中に出国するのは違法です。でも日本の検察官はメディアに情報をリークしています。それも法律違反ですよね?」— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2020年1月8日
承前)検察が行っている数々の法律違反が問題視されないのに、なぜ私だけが(検察も守っていない日本の)法律を守り、我慢し続けなければならないのでしょう?
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2020年1月8日
カルロス・ゴーンの記者会見、新味もインパクトもなく、だらだらと続いている。この程度の内容なら、わざわざ国外逃亡しないでも、保釈中に日本でやれば良かったんじゃないの。焦点はこれを海外メディアがどう報じ、どういう世論が形成されるかだ。
— 加藤清隆(政治評論家) (@jda1BekUDve1ccx) 2020年1月8日
ゴーンの会見見てると、ああ、外国人と働くとこういうこと言われて結局日本が悪いってなって馬鹿にされてたなーってこと思い出してもう考えたくなくなる。
— れんじ (@chatrussie) 2020年1月8日
論理をすり替えてるね
ゴーンはその自己愛の強さ(サイコパス の特性でもある)も相まって、いかに自身が不遇でアンフェアな日本の司法に苦しめられたかを情に訴えてる
都合の悪いことは触れずに、でもさらけ出して話してる風に装ってる法曹関係者の言い分は色々あろうが…
こいつは筋金入りの悪だよ— Dante (@take4_fox) 2020年1月8日
他の人も少なからず法律違反になるようなグレー行為をやっているのに、なぜ日本や日産に貢献してきた自分が罪人になるのかという不満があるんでしょうね。ホリエモンが逮捕された件にちょっと似ていると思います。
確かに出る杭や目に余る人間は捕まってしまいますが、実際にそれがその国の法律違反であれば文句を言うのは筋違いというような気もするのですが、世界はこの件をどう受け止めるのでしょうか。
小学館のナイスな質問
小学館の記者の質問でゴーンかあるいはその取り巻きによって、会見場に入れる記者を選別していたことが明らかになりました。質疑応答の一部は出来レースかもしれません。
あとはこの事件はハリウッド映画になるようですが、アルゴのように成功するがどうかは疑問です。昔と違って史実が映像として残ってしまうので、あれなんか思ったより事実はショボイんだなということになってしまいそうです。
日本国民からすると到底納得できないゴーン氏の会見でしたが、唯一褒めるとすれば間に弁護士や通訳を入れずに一人で全て対応していたのは立派だと思います。以上カルロスゴーンの記者会見でした。