化学製品の原材料や部品を資生堂などの製造・販売企業に供給している『カネカ』が育児休暇を取った男性社員に対しパタハラで対応したとして大炎上しています。(男性社員は既にカネカを退職)
カネカは時価総額2000億円以上の大企業ですが、育児休暇に関する理念をHPから削除するなど、初動を大きく誤った感があり、場合によっては株価などに影響があるかもしれません。今回の育休騒動についてまとめてみます。
育休⇒転勤⇒退職
以下育児休暇をとった男性社員の奥様のツイッターでの発言の一部。
信じられない。
夫、育休明け2日目で上司に呼ばれ、来月付で関西転勤と。先週社宅から建てたばかりの新居に引越したばかり、上の息子はやっと入った保育園の慣らし保育2週目で、下の子は来月入園決まっていて、同時に私は都内の正社員の仕事に復帰予定。何もかもあり得ない。— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年4月23日
とりあえず私労働組合に電話していろいろアドバイスをもらったが、突然すぎて頭追いつかない。不当すぎる。
ピンチはチャンスで絶対切り抜ける!
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年4月23日
TL商社の話も、いまわが家で起きてる育休明け転勤の話も、なんか子ども産んだら負け、てストーリーになってる。どうしたらいいのかなー。
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年4月24日
上長と人事には、組織に属している以上転勤は当然だが、今のタイミングでは難しいから1、2か月延ばして貰いたいと依頼したところ、ダメと。都の連合からアドバイス貰い、会社の労働組合にも相談したが人事OK出てる以上仕方ない、と。最後、労働局に相談したら、紛争状態になったら事業主との間に入り、
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年4月25日
住宅ローン返済が始まる今月に夫無職になるなんてまったく想定外だった。
私来月仕事復帰だけど、子どもたち私の扶養に入れなきゃいけないな。他にもたぶんやる事山積み。
男性育休とって見せしめにされた夫は何も悪くないから、夫婦協力してやっていくしかない。— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年4月26日
ちなみに夫は日系大手メーカー勤務。連結1万人くらいの規模、本社で2人目の男性育休取得者で、取得前人事からは、社会の流れから男性育休の事例作らなきゃいけないんです、的な事言われてた。取ってみたら明けて2日で地方に単身赴任命令。時代に逆行してるのか、まだまだ本質がそこにあるのか。
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年4月26日
改めて決意
夫日系一部上場企業で育休とったら明けて2日で関西に転勤内示、私の復職まで2週間、2歳と0歳は4月に転園入園できたばかり、新居に引越して10日後のこと。
いろいろかけ合い、有給も取らせてもらえず、結局昨日で退職、夫は今日から専業主夫になりました。私産後4か月で家族4人を支えます
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年6月1日
わお!みなさまありがとうございます!補足すると、内示言われてから居住地域の労働局、人事、労働組合、都の労働局に相談しています。「社員の転勤命令は違法ではない」が統一意見でしたが、そこに妥当性(どうしても夫でなければならない、このタイミングでなければならない)が見られるか、が→
— パピ_育休5月復帰 (@papico2016) 2019年6月1日
これでもかなり省略しました。
気になる方は「パピ_育休5月復帰」さんのアカウントから発言をご確認ください。
要約すると
・夫がカネカで育児休暇を取得
・新居を構えた直後に転勤の内示
・労基に相談したが転勤は違法ではない
・旦那は退職し主夫に。
・退職前の有給消化認められず
こんな感じ。
パピさんの言う事が大方事実であれば、育児休暇をとった男性社員を冷遇し見せしめにするための転勤内示でしょうか。ここで一番問題になってくるのは、カネカが『くるみんマーク』を取得していた点です。
くるみんマークとは 厚生労働省しっかり!
以下厚生労働省HPよりくるみんマークの説明。
「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。
次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。
この認定を受けた企業の証が、「くるみんマーク」です。また、学生・求職者の方は、企業研究の指標の一つとしてもご活用ください。
この「くるみんマーク」を取得していると、子育てをサポートする対価として、税制優遇措置を受けたり助成金をもらえたりと色々と恩恵に肖ることができます。
あとは健全な企業であるというアピールにもなりますし、くるみんマーク取得企業ということで優秀な人材を集めることもできるでしょう。
「くるみんマーク」を取得して助成金など旨味だけ吸っといて、約束したはずの育児サポートはまるでやってない実態は事実であればマズいです。
これはカネカにくるみんマークを認可した厚生労働省にも疑問ですし、少子化が叫ばれる日本にとって割と大きな社会問題かと思います。
カネカの対応が酷い
実際のところこの女性の発言が全て事実かどうかは分からないですが、カネカの対応は相当酷いです。
カネカ…トップページはサーバーダウンを装っていて、その下はちゃんとある…もうねぇ炎上の対応としては最悪のそれじゃないのかと… pic.twitter.com/tNNYPBMKNf
— あんぱん (@anpan_2634) 2019年6月2日
サーバーダウンを装った火消に、あとは以下の育児休暇に対する企業理念をHPから削除しています。
| ワークライフ・バランス
当社では、社員が安心して活き活きと働けるよう、柔軟で自律的な働き方の拡充や、仕事と家庭の両立に向けた取り組みを進めています。| 働き方改革
当社では、「フレックス勤務制度」や「裁量労働制度」、「在宅勤務制度」等を導入し、社員に柔軟で自律的な働き方を提供しています。~略~
当社は2009年度に、社員の子育てを支援していると認定された企業に付与される「くるみんマーク」を取得。
次世代育成支援対策推進法に基づく「行動計画」を策定し、目標達成のために取り組みを継続しています。
2016年度の実績は以下の通りです。■関連制度利用者数(2016年度)
制度名 適用期間および内容 人数
育児休業休職 子が2歳6ヵ月になるまで 男性3名 女性37名~略~
社員の子育てを支援していると認定された企業に付与される
「くるみんマーク」
介護セミナーの様子社員の声 育児休業制度の活用
法務室 石黒 文寛息子が生後6~7か月の頃に育児休職をとりました。息子ともっと一緒に居て育児をしたい、
共働きを両立させたい、育児を経験することで周りへの配慮ができるようになりたいとの想いからです。
育児の大変さを実感したことで、仕事と育児を両立することの難しさを理解できましたし、
生産性高く働いて早く帰宅することで妻と家事や育児を分担しようと改めて思いました。
そして何よりの成果は、妻・息子との絆が深まったことです。法務室 石黒 文寛
(http://www.kaneka.co.jp/csr/employees/05/)
後ろめたい事があったのか、現在は閲覧することができなくなっています。
違法性は
育休復帰後2日で転勤命令はひどいけど、法的には違法性がない。
ただ、有休消化させずに退職強要が事実なら完全にアウト。
カネカの人事、広報も真っ青だろうな。
制度あっても労務管理の問題を管理職個人の主観や思い込みで回答や運用する企業も多いようで闇深い。
— yuichiroyummy (@yuichiroyummy) 2019年6月1日
転勤は違法性なし、有給消化拒否はアウト案件かと思います。ただし違法性がないといっても育休⇒転勤は相当印象が悪いです。
カネカの主張も聞きたいところですが、今のところHPを削除したり復旧したりのリアクションしかしていません。
カネカとカネミ油症事件
恐らくほとんどの方が知らなかったであろう、「カネミ油症事件」(1960年代にあった食品公害事件)にカネカも関与していたことも今回の育児休暇トラブルを機に拡散されていました。
お若い皆様はご存知ないかもですが、カネカの前身の鐘淵(かねがふち)化学って会社はカネミ油症事件っていう凄まじい公害問題に関係してまして
もう50年以上経つんですけど未だ十分な保障がなされてなくて、救済の法律ができたのが数年前で
そんな会社です
私は信用してませんご参考まで
— NatsuiHisato (@natsuihisato) 2019年6月2日
厳密にはカネミ倉庫という会社がメインで、鐘淵化学はここにPCBを作って卸していたんですね確か。で、PCBが有害だとわかってからも卸し続けていたと。
しかし今回の話を見せていただいて、経過はどうあれ会社の体質って変わらないんだなあと、改めて。#カネミ油症事件
— NatsuiHisato (@natsuihisato) 2019年6月2日
鐘淵化学(カネカの前身企業)は被害者らに返還請求権を行使しない温情を見せてはいましたが、責任を負わされ賠償を払う事になった「カネミ倉庫」は、2018年のインタビューなどで社長がカネカに対し不満を述べていました。
http://www.jea-navi.com/archives/2075
ネットの反応は
ほとんどは育児休暇者に同情的な意見でした。
少々ずれるけれども「家買ったとたんに転勤」「子供が生まれたら転勤」って古い日系企業あるあるだとは思うんだよね。今まで泣き寝入りするしかなかったことが、SNSで拡散され叩かれるとは時代が確実に変わっているなと。カネカは存分に叩かれるがよいし、他社も次は我が身と思って制度見直してくれ。
— うさぎ@2y&4m♀ワーママおやすみ中 (@usacojapan) 2019年6月1日
転勤という提示に対しての落としどころが退職では、妥当性も何も無いですよね…提示条件を多少曲げてでも残留交渉してこその妥当性というものではないかと…
— yanma SSTR:1322 (@yanma111) 2019年6月2日
政府が大々的に男性の育休取得をって話している最中のこの事案。非常に不愉快。パパ育休明けて2日で辞令って完全な嫌がらせじゃん。子育ての一番大変な時期に転勤とか何考えてんの?頭おかしい会社なのまるわかりじゃん?#カネカ#カガクでネガイをカナエル会社
— 秋春 (@akiharu_akiharu) 2019年6月1日
#カガクでネガイをカナエル会社 のパタハラの件を見たが、これ本当なら会社としてヤバイね。 クソ上司の独断かと思ったけど人事にも相談したのに有給休暇の消化すらNGくらったらしい。カネカ側の主張をじっくり聞きたい。ってか、これでダンマリは無いよね。
— Gak (@gakkei3) 2019年6月2日
こういう会社が少子化に拍車をかけておきながら、人手不足だとか宣うんですよね。
— パンダ (@warthog1167) 2019年6月1日
こういうのがまかり通っている現状を放置して
「少なくとも三人」とか言っちゃう日本の闇を感じます。
私が子育てしてた30年前からほとんど進歩してない現状に、日本は滅ぶな、とすら思ってしまいました。お体お大事に、そしてご家族をお大事になさってください。
— 姐さん (@KEIKO207) 2019年6月2日
詳しくないですが、転勤内示は労働基準法的には問題ないのですかね。だとしたら卑劣な嫌がらせだなぁ。
有給取らせないのは労働基準法的に問題大有りで、弁護士に相談するのもありかと思いますが、大変ですよね。酷い。
暴露もそう簡単にできるものではないと思うし、ほんといろいろとお疲れ様です。
— ツイッター医療団一人なのに応援団 (@iryoudanouendan) 2019年6月1日
酷い会社ですよね…
こんなHPいらないです pic.twitter.com/WpFu2bI7hM— meg* (@megsan11) 2019年6月1日
転勤が無条件受け入れに前提に転勤無しの地域社員なら給料を下げることをやってくることが問題。
基本は転勤できないで転勤に応じたら給料を割増する、ように仕様変更しないと。
— ジャイアンツゼロ (@pIT9S99YP0Nwu5l) 2019年6月2日
初動を誤って、自社のウェブサイトから育休のページを消してしまったばかりに、五十数年前のカネミ油症まで掘り起こされた化学メーカーの炎上事例は、多くの広報担当者が胸に刻んでおくべき。 #カネカ
そもそも、社員を大事にしていれば、こうはならなかったけどね。— たけむら (@tkmr_ykhm) 2019年6月2日
カネカに入社する人めっちゃ減るだろし、株価にも影響するだろうな。こんなにSNSが力を持った時代に「育休明け2日後、新居建てて10日後に、関西転勤で命令して、ダメなら5月末で退職しろ、有休消化とボーナスは無しだ」ってやったら炎上して、有休消化とボーナスどころじゃ済まないですからね??
— 隠遁人妻27歳 (@atasihaOTMA) 2019年6月2日
カネカが公式サイトのライフワークバランスのページをすべて削除したってことはやはり育休だったんだろうか…。それにしても「え、○○が△△だなんて知らないよ!」と嘘つこうとして全部洗いざらい言っちゃう少年のようなピュアハートだ。
— Miyahan (@miyahancom) 2019年6月2日
カネカの件、緊急削除した段階でクロすぎ。この夫婦を叩く人って社畜根性ありすぎ。既婚とか独身とか子持ちとかに関係なく「転勤」っていうもののあり方にそろそろ疑問を持つべきでは。転勤したい人はともかく、これだけ色んなものが発達している世の中でわざわざ、本当に転勤って必要か??
— 奏 (@mymryh) 2019年6月2日
カネカの一件、即転勤を命じながら、引継ぎを理由に有給取得認めない、というのは明らかに会社側のロジックが通ってないので、HPから育休に関するリンク外すとか、そのあたり全般に通底するセコさが炎上する原因でしょう。金を出す権限のない人特有の嫌がらせが可視化されて全員不幸になってる。
— H.M.S.BlackPrince (@HMS_BlackPrince) 2019年6月2日
一部冷静な意見も
カネカの剣、感情と事実は切り分けないとだよね
・会社都合の転勤→入社時に承諾しているはずなので違法ではない
・育休明けというタイミング→産休・育休明けに同部署同職位に戻れないのはグレー
・退職時に有給を消化させない→アウトオブアウト印象面で悪影響なのはその通り。
— タレまゆ@キャリアのしくじり先生 (@taremayu_sue) 2019年6月2日
・育休明けの転勤
→「育児・介護休業法」を根拠に、取得者が不利益を被らないような配慮が求められ、通常これは育休期間終了後も考慮すべきとされる。・退職時の処遇
→退職日の指定は不可(※概ね一般的な見解、判例不明)。有給も法定の権利なので取得拒否が一発アウト。プレスリリースわくわく。
— タレまゆ@キャリアのしくじり先生 (@taremayu_sue) 2019年6月2日
どうしても「育休明けで関西転勤なんて可哀想!」という感情が先に立ちますが、ご指摘のように、事実関係との切り分けが大切ですね。ご本人(旦那様)からの告発ではないので、「グレー・アウトと疑われる内容」について「当事者からのコメントが出るまでは、冷静に観察」が正しいように思いますね。
— CAN (@canchemistry) 2019年6月2日
ありがとうございます。
時代の流れと噛み合ってこれだけ先行して話題になりましたが、仮にほぼクロだとしても、(恐らく)明日の企業側の対応を確認してからでないとなんとも言えないところですね。
— タレまゆ@キャリアのしくじり先生 (@taremayu_sue) 2019年6月2日
カネカか。育休取得に対する懲罰的人事への批判てこと?
無慈悲なタイミングで転勤を内示する会社はいくらでもあるけどな…。(そもそも本人の希望を度外視した転勤がある日本企業がおかしいとは思う)
それより有給消化を認めずボーナス支払い前に辞めさせるのは大問題じゃないの?— ゆん (@minysarrows) 2019年6月1日
育児休暇はとれない
現実問題として余程のホワイト企業でもない限り男性社員が育児休暇をとるのはかなり難易度が高いです。
今回のように即転勤という極端なことは起きなくても、何かしら社内の扱いで損をする事になる企業がほとんどなので、取らない人が多いでしょうね。それはそれで企業もボランティアじゃないので全否定はしませんが、くるみんマークを取得していたのであれば話は別です。
まあ有給休暇も一昔前は取得できない空気が漂っていたらしいですが、今はそんなことなくなりましたので、育児休暇に関してもこれから少しづつ変わっていくのかもしれません。以上カネカの育児休暇転勤炎上騒動でした。