第92回アカデミー賞の発表が行われ、カズ・ヒロ(辻一弘)さんが2年ぶり2度目のメイク・ヘアスタイリング賞を受賞されました。
日系人の快挙に日本人も歓喜と思いきや、カズ・ヒロさんはかつては日本人だったものの、現在はアメリカ国籍のアメリカ人となっており、今回の受賞スピーチでも日本人が落胆するであろうコメントを残されています。
カズ・ヒロさん。授賞式後の会見で、日本の経験が受賞に生きているのか聞きました。カズ・ヒロさんは「こう言うのは申し訳ないのだが、私は日本を去って、米国人になった。(日本の)文化が嫌になってしまい、(日本では)夢をかなえるのが難しいからだ。それで(今は)ここに住んでいる。ごめんなさい」 https://t.co/AkTk5T1uxj
— Toshi Ogata (尾形 聡彦) (@ToshihikoOgata) 2020年2月10日
カズ・ヒロ氏「日本人は、日本人ということにこだわりすぎて、個人のアイデンティティが確立していないと思うんですよ。だからなかなか進歩しない。そこから抜け出せない。一番大事なのは、個人としてどんな存在なのか、何をやっているのかということ。」
— タロー・ヤグチ(折り紙アーティスト/国際弁理士(日・米)矢口太郎) (@taroyagu) 2020年2月10日
カズ・ヒロさんがアカデミーメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しましたが、彼は日本人として縛られたくないということから、日本国籍を捨て、名前も変えました。
日本人が受賞という面よりも、この記事にあるように、このことを取り上げて欲しい。#Oscars#アカデミー賞https://t.co/KJeiaxIw1f— 1218 (@1218noann) 2020年2月10日
「日本では夢をかなえるのは難しい」「日本文化が嫌になってしまった」とかなり日本人の特に保守層の胸が痛くなってしまいそうな言葉がありました。日本批判といっても差し支えないでしょう。ごめんなさいと謝罪されているのは日本人だったころの名残でしょうか。
「夢をかなえる」については、映画の本場アメリカで成功するのが夢であれば、日本にいたら難しいのは当たり前の話なので、イマイチ要領を得ませんでした。
全体の発言は、恐らくは日本におけるエンタメ文化の停滞や、出る杭は打たれる風習や個性を認めない同調圧力についてのことをおっしゃったのでしょう。あとは前回のゲイリーオールドマンからのオファーで受賞となった際に日本メディアが押し寄せていたので、色々と嫌気がさしていたのかもしれません。
カズ・ヒロの華麗なる経歴
1969年生まれの50歳。2019年3月にアメリカ国籍を取得されています。
「スキャンダル」はメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。
カズ・ヒロさんはシャーリーズ・セロンへの感謝をスピーチで述べていました。
授賞式終了後のお2人。#AcademyAwards #Oscars #Bombshell #CharlizeTheron #KazuHiro pic.twitter.com/6OJGOVU1ko
— 𝕔𝕙𝕒𝕠 (@nomovie_no1ife) 2020年2月10日
今回はスキャンダルという映画に出演していたシャーリーズセロンやニコールキッドマンのメイクを担当されています。キャリア初期は映画における特殊メイクですが、2000年代中盤からは現代美術家として活動、映画の世界からは離れていました。
2017にゲイリーオールドマンから直々にオファーがあり映画界に復帰、映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で一度目のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞されています。今最も評価されているメイクアップアーティストといっても過言ではありません。
日本人であることを捨てた理由は
映画における特殊メイクは背景の文化が反映されにくい職なので彼も日本人であることへの拘りがなかったのかもしれません。そもそも彼が高校時代に今の職を志した時に手紙を送ったのもアメリカの業界人に対してでした。
例えばこれが映画監督や小説家ならば、作風に高確率で日本文化が反映されるので、彼よりはまだ日本人のアイデンティティを重んじる気がします。(例えば黒澤明監督などは侍の映画を得意としていました。彼が都合がいいからと日本国籍を捨てたらおかしな話になります)
成功者がアメリカを拠点に活動するならば、単純にアメリカ国籍であるほうが都合が良いですが、カズ・ヒロ氏が日本国籍を破棄してアメリカ国籍を取得しているのであれば、信念のもとそうされたんだろうなと思います。逆に二重国籍状態であれば、ある程度の損得勘定はありそうです。
日本では電通など代理店や事務所の力が強すぎる問題も指摘されていますが、これはアメリカでも中国資本や特定のプロデューサーが力を持っているので、似たような問題はどちらにもあります。
それでもアメリカの方がまだ健全であるとカズヒロさんは考えているのでしょう。以下のような情報もあります。
カズ・ヒロは日本での下積み時代に仕事はなくチャンスすら与えられなかった
日本だとオーディションはまずなく裏方の仕事なんてコネばかりだから
逆にアメリカの場合は基本的にオーディションがあってどんな有名俳優でも篩に掛けられる。裏方の仕事も技術があるならそれだけで上に上がれる
それで日本を飛び出して成功した途端に「日本人が快挙」とか言われてもてはやし始めたそりゃ嫌になるだろう
ネットの反応まとめ
掲示板などでは批判も多かったですが、ツイッターではカズ・ヒロさんの言葉は概ね好意的に受け入れられていました。
カズヒロさんは、最後に「ごめんなさい」と言っておられるけど謝る必要なんて全然ないと思います。まぁ、締め括りとして出ただけの言葉かもしれないけれど。日本人でもそれが可能ならば今は好きな所で好きなことをしていい時代。賞を獲った方がたまたま元の国籍が日本だったってだけの話ですね。
— Hideko (元 paris) (@Hideko_in_Japan) 2020年2月10日
カズ・ヒロ氏は遠まわしながら「日本はクソ。とにかくクソ。US最高」と公言して止まない方で国籍的にもアメリカ人なんだから、もう日本人が!って言うのやめたってと毎度思うwインタビューとかでも日本の話題出すとめっちゃ嫌そうにするからネガキャンにしかならないw
— さゆ (@sayu_ng) 2020年2月10日
日本人、日本の血が流れてる人が快挙を遂げるとすぐ飛んでって日本への思い聞いたり日本の血を確認するみたいな行動するの気持ち悪いから、カズ・ヒロさんが「日本が嫌だからアメリカ人になったんで」ってサックリ返したの見て胸がすくようであった…
— Namida Afredel [nəmídə əˈfredél] (@bonobonochan_13) 2020年2月10日
あんだけ馬鹿にしてたのに海外に認められたら、やれクールジャパンだって言い出すのもほんとあれだし、
カズ・ヒロさんにいたってはすでに国籍すら変えたのにそれでも日本人として誇らしいとか言う人がまだいるのもうへぁってなる。— sumiko (@sumiko_n) 2020年2月10日
カズ・ヒロはあなたのような日本人が一番嫌いだろうね。
日本ではあなたのような人がいるから
国籍捨てたんだよ。
国籍捨てる決意は相当なものだよ、
単なる移住とか就労ビザとは違う。
日本人を止める選択をした。
もう、カズ・ヒロさんは日本人と呼ばれたくないんだよ。
強烈な覚悟だよ。— 暁のうた (@hitomaroaka) 2020年2月10日
カズ・ヒロさんはすごい人だし、技術は誰も真似できない。本当に尊敬する。日本を去る人がいても全く疑問に思わないし、私だってすんなりと行けるなら海外に行きたいよ。努力したり、幸運をつかんだ人だけが日本脱出できる状況だからね。望めば行けるわけではない。日本で夢がかなわないのは事実でしょ
— Hitomi@ホラー&映画&放大生垢 (@Lady_hi_to_mi) 2020年2月10日
今の日本は夢も希望もないとは言わないがいつ明けるか分からない真夜中という感じだし能力がある、才能ある人ほどカズ・ヒロさんの気持ちに共感すると思う。
「美しい国、日本」という言葉があるが本当にそうかな?
もはやそれは過去で「美しかった国、日本」な気がしてならない。— Naoto the liberty (@The_third_S) 2020年2月10日
同じアジア人としてポン・ジュノ監督の受賞は喜ばしいことだけどさw 人それぞれバックグラウンドが違うじゃない?カズ・ヒロさんに関してはかねてからそこまで日本に思い入れがない人だからアメリカ人になったって言われてるのに、日本アゲしたいからってこういう質問するのは失礼だよね🤔
— Hitomi@ホラー&映画&放大生垢 (@Lady_hi_to_mi) 2020年2月10日
日本にいたら潰されてたろうからしょうがない。カズ・ヒロ
— Akihiko Nakano (@emptiness2307) 2020年2月10日
カズ・ヒロさんは「日本の経験が受賞に生きているのか」とか、こういう質問されるのが心底へきえきしたんだと思う。カズ・ヒロさん個人が生きて創ってきたから今があるのに。
— 柴犬 (@shibainu527) 2020年2月10日
パラサイトのみなさん、カズヒロさん、みんなほんとおめでとう!!
— MAE2828 (@MIN28282) 2020年2月10日
今の日本には希望がほぼなくエンターテイメントの質が悪くレベルが低いというかなんというか…
日本を捨てアメリカ国籍を取得されたカズ・ヒロさんがメイク・ヘアスタイリング賞を受賞したのと韓国映画のパラサイトが作品賞を受賞したのは必然だった気がする。— Naoto the liberty (@The_third_S) 2020年2月10日
カズ・ヒロさんは特殊メイクで洋画のほうが収入面も大きいので国籍変更は仕方ないよなと思う。日本は技術職を軽視して低賃金にするのでクリエイターは独立や海外で売れるよう動くしかないんだよな。
— 浅ひるゆう (@YOUmacaron) 2020年2月10日
アメリカにウケることを目指すことが映画にとっての全てになってる人たちのアジアが世界に認められた…!みたいなのなんかダサい
今年もまたメイク・ヘアスタイリング賞を受賞したカズ・ヒロさんの「日本人が」「アジア人が」じゃなく1人のアーティストとして評価されたい、って姿勢の方がカッコいい— さくら (@sato4luv_sakura) 2020年2月10日
日本映画をdisっている訳じゃない。現に是枝監督はパルムを取り、千と千尋は長編アニメ賞を取り、渡辺謙はノミネートまで行き、カズ・ヒロさんが2回も受賞した。闘う力があるのに、闘わせてくれない業界を憂いているんだよ、映画ギークは!
— アナマリア (@anna_maria107) 2020年2月10日
悩んでいる人に知ってもらいたいカズ・ヒロさんの言葉。
無理に周りに気に入られようとか、周りの波に乗ろうとしなくて良い。
おかしいのは貴方ではなく、個性個性言いながら型にはめようとしてくる日本社会の方な。#オスカー #カズ・ヒロ pic.twitter.com/7PV8EKe5nK— kakapo. (@magical_birz) 2020年2月10日
掲示板では、韓国映画のパラサイトが史上初アジア映画でアカデミー作品賞を受賞したこともあってか、やや保守層のヘイトがたまっていました。
同調圧力も一つの個性説 日本の良いところ
日本のトップスタイリストの祐真朋樹さんは、日本のファッションが足並みをそろえ画一化されることも、それはそれで面白い一つの文化として解釈されています(若い頃は個性を重んじる外国のファッション文化に傾倒していたそうです)。
今回はカズ・ヒロさんの言葉がやや独り歩きして、日本文化が全否定される勢いになっていましたが、個人的にそこまでとは思わないですかね。日本文化にも良いところはあります。
但し話はちょっと飛びますが、ここ最近のコロナウイルス対策については全否定させてもらいたいですね。文化というより政治の問題ですが、その仕組みを作ったのは、日本文化に育てられた日本人なので繋がりが無いとも言えないです。今後もこういう個人主義の日本人(特に才能にあふれる方)はどんどん増えていきそうです。