日本代表がポーランド戦で行った露骨な時間稼ぎ。そのパス回しの是非が問われていますので、過去に起きたいくつかの事件と照らし合わせて、考えてみたいと思います。
ルール的にオッケーなのか
一応問題ありません。
八百長や談合試合ではなく、単にパス回しをして時間潰しをしていただけなので、ネイマールなんかが勝利している試合でボールをこねくりまわしてキープして時間潰しするのと根本的には同じです。
ただ唯一違うところが、日本の場合試合に負けているということです。
負けている試合だというのに、大会や日本の事情で攻める気を見せないというのは、スポーツマンシップに則っていない所か、本来のサッカーの目的にも反しているので、今後問題提起される可能性のある要素ではあります。
(見ていて気持ちいいものではないので、例えば自軍エリアでのパス回しに時間制限を設けるなど、改良の余地はあります。)
但し今回の試合は問題なしです。現行のルールには何ら違反していませんので、日本が今回のグループで2番目に強かっただけです。
一皮むけた日本代表
要領の悪い日本人が、したたかな外国人に出し抜かれるという状況をこれまで何度も見てきました。今日は珍しく日本人が競技ルールを要領よく活用して勝負に勝つことができました。
批判の声はあるでしょうけど、体格で劣る日本人が世界で勝つためには、そういう、したたかなプレーも必要になってくるはずです。
以前ウルグアイのスアレスが確実に入ろうかという相手のシュートを、故意のハンドによって防いだ場面がありました。批判はありましたが、私はあれも有りだと思っています。
理由は退場というルール上の代償を払っているからです。
今回の日本も、セネガルが点を入れれば、攻めるべき時間を無駄なパスまわしで消耗したという代償を払う事になっていました。そこは釣り合っているんです。
日本は時間を担保に、セネガルが追い付かないという賭けに勝っただけで、情けなくはありますが、卑怯ではないと私は思っています。
(相手選手の肉体を傷つけるような行為は勿論論外です)
オリンピックで起きた無気力試合との違い
2012年のロンドンオリンピックで、バドミントン競技にて中国や韓国の女子選手が無気力試合をして、4人8ペアが一斉に失格になるという事件が起きました。
この事件と今回の日本のパス回しは、共通しているところとそうでないところがあって、まずバドミントンでは明確に「選手行動規範」がルールとして存在し、
「勝つための努力を怠る」
「スポーツ精神にもとる、明白に有害な行為」
この2つのルール違反を根拠に失格とされてしまいました。
サッカーにはバドミントンでいう選手行動規範に近いものとして、反スポーツ的行為(以前の非紳士的行為)なる規則は一応あります。
ただそれは、大声を上げてはいけないとか、選手のおっぱいを揉んではいけないとか、そういう方向性の規則であって、「勝つために努力しなくてはいけない」というスポーツの基本原則のようなものは定められていません。
(談合試合とかはまた別です。これも判断は難しいですが、両者が意図的に試合結果をコントロールするのは八百長に分類されます。)
スポーツの理念
日本の場合は簡単にいえば、「攻めっ気が一切なかった」点ですから、ルール上の問題はありません。
ただし、スポーツ本来の目的として「相手を負かす」という理念があるはずなので、これは今後ルールに改良を加えてもいいのかもしれません。
(とはいっても、サッカーの場合必要なパス回しもあるので、判断がとても難しくなると思います。)
負けている試合で時間稼ぎのパス回し、日本では初めて大きく注目された行為ですが、スポーツのルールについて考えさせられるきっかけとなるかもしれません。