カルロスゴーンが日本から不正に出国しレバノンに逃亡した事件で、彼の弁護団の一人であった高野隆弁護士がブログで、日本の司法制度に対する問題提起を行い物議を醸しています。
高野隆弁護士の告発は正義感と責任転換どちらが原動力になっているのでしょうか。
カルロスゴーン氏の弁護人高野隆氏のブログです。彼は、弁護士の世界で最も尊敬される刑事弁護人の一人です。
高野氏は、とても正直に書いているなと思います。
印象深いパラグラフを引用します。... https://t.co/Z0pNk4MKEp— 海渡雄一 (@kidkaido) 2020年1月4日
ゴーン氏の弁護団は高野隆以外にも弘中惇一郎、河津博史などが名前を連ねています。ちなみに今回ブログで告発した高野隆氏は、地下鉄サリン事件の犯人となったオウム真理教教徒の弁護も務めており、日本の法曹界でもかなり権威をもった人物のようです。
以下ブログ内容から一部抜粋引用(全文は⇒http://blog.livedoor.jp/plltakano/)
彼(カルロスゴーン)が日本の司法制度についてこうした批判を口にしたのは今回が初めてではない。東京拘置所に拘禁されているときから、彼は日本のシステムについて様々な疑問を懐き続けた。彼は日本の司法修習生よりも遥かに法律家的なセンスのある質問をいつもしてきた。
「そんなことで公正な裁判(a fair trial)は期待できるんだろうか?」
彼はなんどもこの同じ質問をした。そのつど私は日本の実務について、自分の経験に基づいて説明した。憲法や法律の条文と現実との乖離についても話した。
「・・・残念ながら、この国では刑事被告人にとって公正な裁判など期待することはできない。裁判官は独立した司法官ではない。官僚組織の一部だ。日本のメディアは検察庁の広報機関に過ぎない。しかし、多くの日本人はそのことに気がついていない。あなたもそうだ。20年間日本の巨大企業の経営者として働いていながら、日本の司法の実態について何も知らなかったでしょ。」
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とりわけ、妻キャロルさんとの接触禁止という、国際人権規約に違反することが明白な保釈条件が、どんなに手を尽くしても解除されないことに、彼は絶望を感じていた。
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クリスマス・イブの昼下がり、島田一裁判官が1ヶ月ぶりに認めた妻との1時間のビデオ面会に私は立ち会った。二人はお互いの子どもたち、親兄弟姉妹その他の親族や友人、知人ひとりひとりの近況や思い出話を続けた。話題が尽きない。そろそろ制限時間の1時間が経とうとするとき、彼はノート・パソコンの画面に向かって言った。
「君との関係は、子供や友人では置き換えることはできない。君はかけがえのない存在だ。愛してるよ、Habibi。」
私は、日本の司法制度への絶望をこのときほど強く感じたことはない。ほとんど殺意に近いものを感じた。
「カルロス、とても申し訳ない。本当に日本の制度は恥ずかしい。一刻も早くこの状況を改善するために私は全力を尽くすよ。」
返事はなかった。彼は私の存在などないかのように、次の予定を秘書と確認していた。
その1週間後、大晦日の朝、私はニュースで彼がレバノンに向けて密出国したことを知った。まず激しい怒りの感情がこみ上げた。裏切られたという思いである。しかし、彼がこの国の司法によって扱われてきたことを思い返すと、怒りの感情は別の方向へ向かった。
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確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない。*これは私の個人的な意見であり、弁護団の意見ではありません。
ゴーン氏はとくに嫁さんと会えなかったことが辛かったようですね。検察の名分としては逃亡や証拠隠滅の防止ですが、強引すぎた感はあります。
高野隆弁護士としては、ゴーンが逃げたことに激しい怒りを感じたものの、すぐに怒りは別の方向、恐らくは日本の非人道的(と彼が解釈している)な司法制度に向けられたとのことです。
高野隆の言い訳と正義感
ごもっともなことを言っていますので納得させられる部分も多いですが、説得力に欠ける点が2つあります。
まずは虫が良すぎるそのタイミングです。
日本の司法制度は確かに時代錯誤かもしれませんが、弁護していた被告に逃げられ世論のバッシングの対象になろうかというタイミングでこの告発は、いくら正論であっても、言い訳に感じる人がいるのは当然です。例えばこれまでも有名な袴田事件の裁判など、いくらでも日本の司法制度について問題提起するタイミングはあったはずです。
あとは日本の司法制度で飯食ってるプロがこれを言うのも変です。被告の逃亡を責めないレベルで日本の司法制度に疑問を持っているのならば、弁護士でなく政治家にでもなって正規の手段で改革して欲しかったです。
司法制度は変わるべきなのか
推定無罪という前提があるにもかかわらず、例えば痴漢の冤罪で逮捕されてしまった際に「20日以上勾留される。否認したらクビになるかも。認めたら即釈放。」という、有罪ありきで取り調べが進行したり、人権がないがしろにされている実情があります。
あとは多くの刑事裁判は、検察の意向で有罪ありきで進行してしまう問題点も指摘されています。日本の起訴からの有罪率は99%以上と言われています。(例えばイギリスは80%)
但し日本はフランスと並んで起訴便宜主義でありますので、条件を満たした場合必ず起訴しなくてはいけない起訴法定主義のドイツなどと事情が違うことは留めておく必要があります。
司法の独立性ランキングでは日本が世界5位というデータもあるようですが、推定無罪の在り方については外圧によって是正が促されるかもしれません。
上念司は高野隆を批判
保守派の雄上念司さんは批判を展開しています。
ゴーン弁護団の弁護士も世田谷自然左翼だったのか。検察と裁判所に意地悪されたから、保釈中に逃げても仕方ないのね。世田谷自然左翼の願い、それは金持ち無罪の天国のような国です。恐ろしい!!
彼が見たもの - 刑事裁判を考える:高野隆@ブログ https://t.co/cM28EHflkH
— 上念 司 (@smith796000) 2020年1月4日
確かに人質司法は問題だし、批判は分かる。でも、保釈中に逃亡したらダメだろ。しかも入管法違反(不法出国)だし。
— 上念 司 (@smith796000) 2020年1月4日
ホリエモンは検察批判
ホリエモンの政治思想は良く分かりませんが、安倍首相にかなり好意的なので保守派なのかもしれません。
私は割とホリエモン好きなんですが、この方に一貫しているのは「利己主義」「検察憎し」なので私情が入っている感もあります。
ネットの反応まとめ
まずは高野隆肯定派の意見から。
無実を訴える被告人の弁護に真剣に取り組んだことのある弁護士であれば、誰しもが、こう受け止めるであろう。それほど、検察の独善に蝕まれた日本の刑事司法は、酷い。→【彼が見たもの : 刑事裁判を考える】:高野隆@ブログ https://t.co/ymQM6cm43v
— 郷原信郎 (@nobuogohara) 2020年1月4日
「裏切ったのはカルロス・ゴーンではない」。重い言葉だ。
— 立岩陽一郎 (@YoiTateiwa) 2020年1月4日
とても正直に書いているという印象です
弁護団は現在の刑事公判実務を前提に無罪を目指したが、被告人は現在の刑事実務に絶望したので、現在の刑事公判実務を前提にしている弁護団にも絶望したということですね— この世界のカイロレン (@maplesyrupdream) 2020年1月4日
唸った。絶対にこのブログは読まなくてはいけない。本当に変えなくてはいけないんだ。
— いらないちゃぁ (@miyaginobeya) 2020年1月4日
カルロスゴーンのやったことは決して褒められたことではない
だけど、それ以上に非難されるべきは日本の司法制度
完全にときの政権の意向に沿って人の基本的人権を奪い、人をあたかも重大な犯罪者であるかのように扱う司法当局とマスコミだろう
恥ずべきは司法当局とマスコミだ— tomato (@_775135195318) 2020年1月4日
高野弁護士のブログの2019年5月のエントリを見れば、このような文章を綴る心情も理解できます。
ゴーンにとっては保釈後も家族を人質にされていたのだから。— imai tko (@imaitko) 2020年1月4日
弁護人高野隆弁護士が、ゴーン氏の出国についてブログを更新。彼と向き合ってこられた高野弁護士の複雑な思い。私は涙無しに読めませんでした。是非皆さんに読んでいただきたいです。
「確かに私は裏切られた。しかし、裏切ったのはカルロス・ゴーンではない。」https://t.co/Xa1chZgtBO— 佐藤倫子 (@sato__michiko) 2020年1月4日
反対派の意見
正当化を印象づけてるんですね
— さんだるふぉん (@sigesinedann42) 2020年1月4日
コレは通らないのでは?その国の司法に従うのが世界中の決まりです。イスラムの国で盗みをしたなら手を切られます。シンガポールで麻薬を使えば死刑です。それが世界中での決まり事です。弁護士が人権を求めるのなら、法廷で戦うべきでは?尊敬される弁護士って法廷で戦わない?いう言葉を安く思います
— Saliya (@1984saliya) 2020年1月4日
その国で生きるなら、その国の法律に従うのが決まりです。それなのに弁護士がそれを説明してないの?「この国の法律はおかしいですから~」と???詭弁もいい加減にね。
その方もその国の法律に従う約束で入国されていますよね。
— Saliya (@1984saliya) 2020年1月4日
まぁ犯罪者を弁護するのが弁護士の仕事ですからね。本来なら法廷でやるべき所を、場外乱闘に持ち込んで、世論操作で有利にするなんて、あの関東連合ですらやってた事ですから。せめて日本へのネガティブキャンペーンにならぬよう、祈るばかりです。
— HowlingUnderdog (@HowlingUnderdog) 2020年1月4日
ゴーンみたいな悪人の弁護士してる時点で尊敬できるわけがない
— NAD (@futuunohuman) 2020年1月4日
読ませていただきましたがガッカリしました。「日本では公正な裁判は期待できない」と言い切る人がまともな弁護ができるのでしょうか?悪いけど、最初からそんなこと言われたらゴーンも逃げ出したくなる気持ちもなりますよー。そうなるとその弁護士さんも責任を問われませんかね?
— KANO・T (@KANOT14) 2020年1月4日
私見です
今回は金額も膨大ですが
それ以上に彼がフランスとの計画
ルノーグループに日産
三菱を子会社にしてフランスの会社にして
クズのルノーを見た目よくする計画日本の国益として許されない
よって10日そこらの拘置ではなく
本来は出したくなかった筈です— HIROMARO (@HIROMARO_usa) 2020年1月4日
ゴーンが裏切ったと言うより、ゴーンは弁護団を見切った訳ですね。
つまり、日本一有能とまで言われる弁護団をもってしても勝てないとあきらめたわけで、その日本の検察に対し、海外からなら不実を暴いて勝てる見込みがあるという事か。
検察の証拠固めがどこまで進んでいるのかが見物ですね。— たけちゃん(痛風治療中) (@amgtko) 2020年1月4日
自分たちの出した保釈条件が意味をなさなかったことの反省も無し・・・。
世界中のテロリストに日本は出入国が簡単と知らしめてしまった反省も無し・・・。— mischief milky (@poppoab) 2020年1月4日
まるで犯罪者視点の言いぐさですね、仮にも弁護士の言葉では有りません❗
弁護士会は処分を直ぐにすべきだと思います❗(^-^)/— ジャスタウェイ (@j377TUVqklW9T2T) 2020年1月4日
ちょうど半々ぐらいですかね。
カルロスゴーン出国の功績
カルロスゴーンのやったことは1ミリも肯定していませんが、プライベートジェットでの出国の際の不備や、日本の司法制度の是正など、思わぬ副産物を生んでいます。
Netflix「クリミナル」フランス編:日本と違うのは、取り調べの間被疑者の隣に弁護士が同席していること、勾留期間が24時間であることだ。
ドラマでは、女性の捜査官や弁護士が多く登場する。それも男の助手的な存在でなく、男より優秀だったり、男の上司だったりする。 pic.twitter.com/VD40HCblDs— 土佐の酔鯨 (@tosasuigei) 2019年9月22日
フランスでは勾留期間24時間が原則だそうです。ただし諸外国にはGPSで犯罪者や保釈された被告を監視しているところもあるので、バランスを考えて改革をお願いしたいところです。