現在公開中の映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』の山田洋二監督に旧知の仲である横尾忠則さんが怒りをあらわにされています。
寅さん演じる渥美清さんをコラージュとして引用したのは、自分が山田洋二に進言したアイデアだと立腹のようですが、その程度であれば以前からある手法であるとして横尾忠則が大人げないという意見も少なくありませんでした。果たしてどちらに正当性があるのでしょうか。
【寅さん新作 横尾忠則氏が抗議】https://t.co/7cVxpOSxI4
公開中の「男はつらいよ お帰り 寅さん」について、山田洋次監督(88)と旧知の間柄である世界的アートディレクター・横尾忠則氏(83)が抗議。「自分のアイデアを山田監督に無断使用された」。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) 2020年1月3日
↑ お帰り寅さんの予告映像。すっごい面白そう。
映画監督とイラストレーターの重鎮お二人が揉めた経緯ですが、以下横尾忠則さんの言い分です。
・お帰り寅さんのアイデアとコンセプトは自分が出したものが核になっている。
・1995年に書いたエッセイのイラストがきっかけで、2005年以降に山田洋二監督と一緒に映画を見たり、同じ行きつけ先にしていた蕎麦屋で一緒に食べたりの仲になった。
・渥美さんなしに寅さんは撮れないと悩む山田洋二に、撮れる、過去作から抜粋してコラージュすればいいと進言。山田洋二さんは相当刺激を受けたようだった。過去作を全部見て欲しいと頼まれ、横尾忠則もノリノリで作品を作るなら関わらせて欲しいと提案するが山田洋二無言。以降徐々に距離を置かれる。
・プロデューサーにことの詳細を伝えたが山田洋二への忖度からか伝えられていない様子だった。
・「家族はつらいよ」のキャラクターも登場させればいいとも提案した。(それも寅さんで実現)
・CGで寅さんの幽霊を表現するのも自分のアイデア
・面白いアイデアは独り占めというのは山田洋二の性格なのか
収まらない横尾忠則さんは、山田洋二さんにまずは手紙という形で抗議したそうです。すると山田洋二が慌ててやってきて、「これからは取材で名前を出す」と笑いながら肩を抱いてきたとのこと。
(実際にその後の取材では横尾忠則さんの名前を出すようになっています)
6:4で山田洋二が悪い
後で紹介しますがツイッターでは「横尾忠則が小さい」「ありふれたアイデア」という意見が大半でした。ただ個人的には6:4で山田洋二監督が悪いと思います。(横尾忠則の言い分が事実であれば。松竹や山田洋二監督にも言い分があるかも)
それほど斬新なアイデアでないのは事実ですが、山田洋二監督に今回その構想はなかったわけで、お帰り寅さんでそれをやって世界観が崩れないのか、横尾忠則さんの後押しがあってコラージュ寅さんに踏み切れたのかもしれません。原案者としてのクレジットはともかく、インタビューで横尾忠則の名前を出さないのは明らかに不自然です。
横尾忠則も小さい 著作権は無し
一方横尾忠則さんも、「名前をクレジットして欲しいわけじゃないから本人へ手紙で抗議した」という割には、山田洋二が取材で名前を出すようになった後に週刊誌に暴露していますので、結局当人同士で決着させるつもりなど毛頭なかったんだろうなと思います。
暴露した理由について
創造は取り込むことではなく吐き出すことです。感情も同じ。今回の週刊誌での抗議は、感情が自分の中を汚染しないために取った手段です。
と難しく表現していますが、要は器が小さく収まりがつかなかっただけです。そして根本的な話として、この類のアイデアに著作権はないので、盗用されたくなければ少なくとも蕎麦屋で言うべきではありませんでした。(また「虹をつかむ男」で似たような演出をしているので山田洋二は横尾忠則を立てていただけかもしれません。)
山田洋二監督も横尾忠則さんも超一流のクリエイターですが、ふたを開けてみれば人間性は名誉欲にまみれた強欲の爺さんという印象です。(芸術家なんて皆そんなもんだと思います。)
どちらかが歩み寄っていれば、また笑って蕎麦屋で食事できる仲だったのにという程度の話ですが、10年来の友情や渥美清を立てる気持ちよりも功名心の方が大事だったようです。
松竹の事情かも
横尾忠則によると、松竹のプロデューサー連中の間では、黒澤明監督と山田洋二監督を同格とされていたようなので、山田洋二への忖度、あるいは寅さんという松竹を代表する作品に横尾忠則という他ジャンルの人間を関与させたくない松竹側の事情も、もしかするとあったのかもしれません。
山田洋二と横尾忠則
「家族はつらいよ」という映画のポスターを描いたりしています。
[映画ニュース] 「家族はつらいよIII」ポスター&予告&劇中カット公開!“陰の大黒柱”不在で平田家ピンチ https://t.co/huTd6slneH pic.twitter.com/TnlViPwoga
— 映画.com (@eigacom) 2018年3月7日
その他「東京家族」のスペシャルアドバイザーとしてクレジットされるなど、お帰り寅さん以前から仕事上のお付き合いもありました。
どっちもどっち派の意見
山田洋次も横尾忠則も渥美清さんに失礼だと全く思ってない時点で同列です。こいつら渥美清さんを何だと思ってんだか80過ぎて故人への礼儀すら忘れているのかって感じでボケ老人にだけはなりたくないものですhttps://t.co/8fuH9wm9bD
— ごもくそば (@YfLkoSiOdcTWKwD) 2020年1月4日
正直、仲が良いのであれば当人同士で「おいアレ俺のアイデアじゃね?」「悪い悪い今度一杯おごるからさ」みたいなエピソードくらいにして欲しかった。マスメディアを挟むと両者の株を落とすだけで只々お互い険悪になるだけなんだよね…円満に解決される事を望みます
— はる (@bariwota) 2020年1月4日
80歳同士のおじいちゃんの大喧嘩。
横尾忠則の絵でサイケデリックに書いてほしい。— ササキクン (@21YOa3AOs1aaESh) 2020年1月3日
偉い人や凄い人たちも結局は
己のエゴに支配されていて、一皮剥けば
「大人げない大人」なんだけど、
アイデアの価値を軽視する世の中も
どうかと思う。— 杏ルナ (@anzuluna) 2020年1月4日
ネットの反応まとめ
横尾忠則さんに批判的な意見。大半がこちらでした。
寅さんの幻影をCGで出すのは20年以上前にもう山田洋次監督本人がやってるってこと、横尾先生知らないのかな?? pic.twitter.com/Ilwz0FWY6r
— newmochitaro (@newmochitaro) 2020年1月4日
渥美清さんが亡くなった頃、飲み屋で「『死亡遊戯』や『死亡の塔』のようにやれば「男はつらいよ」もあと3本くらいは出来る。吹き替えは原一平で」なんてことは言っていたけど、それとそう変わらん会話のような気もする。https://t.co/hgcTVOYQqs
— 佐々木浩久 (@hirobay1998) 2020年1月4日
もし自分が思いついていたアイデアがほかの作家によって小説にされていたら…
横尾忠則氏や青葉真司容疑者みたいに「無断使用された!」「盗用された!」とは思いません
「コイツにでも思いつける程度のアイデアだったんだな」とがっかりするだけです
自分ですぐ作品化しなかった落ち度もありますしね
— 大沢愛 (@ai_oosawa) 2020年1月4日
横尾忠則氏「『男はつらいよ お帰り 寅さん』の故・渥美清さんの映像をコラージュする手法はぼくのアイディアなのに山田監督に無断使用された」
創作関係ではよく聞く言葉ですが、これはもう、苦心の末作品化を成し遂げた山田監督の勝ち
京アニ放火の青葉真司容疑者も「盗用された」と言ってましたし
— 大沢愛 (@ai_oosawa) 2020年1月4日
「アイディアに著作権はない」が所詮は詭弁に過ぎない事がよく分かる、”横尾忠則氏「山田監督のアイディア盗用」に激怒”
でも窮屈な理屈だ…喋るネズミを出しただけでディズニーに法的措置取られるような世界はイヤよ。— ねむりねこ狂四郎 in 馬酔木 (@nemurineko4989) 2020年1月4日
今更ですか?公開してからそんな事言われても?そんな感じでしょうね、映画に携わった演者さん、スタッフさん、そして何より渥美さんに対して失礼です!
— nwoTsuyoshi (@AxD4eMLnMvHuJ1e) 2020年1月3日
こういうの一番格好悪い…(-_-;)
アーティストなら作品で勝負しなよそもそも、寅さんというフォーマットがあってそれにアドバイスしてる時点で、あんたが乗っかってんじゃん。
一から映画を作ってみたらいい— トシ(GS nameトシスピアー) (@yg_toshi) 2020年1月4日
横尾さんには申し訳ないけどそんな手法は前からあるし今の時代なら誰でも思いつく。
— FoxTailSoup (@foxtailsoup) 2020年1月4日
うーんと、とっくにスターウォーズだのがやってる手法じゃないかと思うんだが。
— [OG3]Negitoro (@NegitoroMazina) 2020年1月4日
亡くなった方の音源や映像を再利用、再構築は横尾さんのアイデアでは無いと思うが。
蕎麦屋で顔付き合わせて文句言うのがベストでは。— 齋藤 義幸🐍🐸 (@cyproduct) 2020年1月4日
ゼロ号まで観ておいて何を今更... 横尾さんの絵は好きだけど「家族はつらいよ」のポスターも正直あまり良くなくて。山田洋次監督、男はつらいよ作品に関わらないで欲しい。
— San (@sanpei98375174) 2020年1月4日
山田洋二が悪いという声も
ツイッター上では少数でした。
なんで横尾さんを原案者とクレジットせずに映画製作が進行してしまったのだろう?松竹に在っては山田監督は天皇なのかな。。
— いずみ@迷いの森 (@izumi247) 2020年1月4日
クレジットに「横尾忠則」って入れば、ハクだって付いただろうに。
不義理で横尾さん怒らせただけ損だ。— まされヰヲ (@Leon209921) 2020年1月4日
記事を読む限り、今回は横尾氏の主張に分が在る様子。松竹映画においての山田監督は絶対だそうで、以前も新作公開を前に同じ松竹から出す予定の軍事関係DVDの広告が控えられた話も聞く(^ ^;https://t.co/Q4U31poYrF
— よしぞうmaro' (@yosizo) 2020年1月4日
横尾先生が著名だからこうなる訳で、ほぼこの手の話は「アイデアに著作権ねーから」で一蹴されます。僕も一蹴されたのが積み重なってのさようなら。
「山田洋次監督にアイデア無断使用された」横尾忠則氏が激怒 - ライブドアニュース https://t.co/VsAAa7xDUe
— KAKUTO⭕️イラストレーター (@hidetix) 2020年1月4日
お帰り寅さんはかなり評判がいいようですが、思わぬところでケチがついてしまいました。渥美清さんのためにも万事丸く収まって欲しいところです。